「伝わらない文章」は内容ではなく構成の問題
「言いたいことは正しいのに、なぜか伝わらない」――その原因の大半は、語彙や知識の不足ではなく 情報を並べる順序 にあります。人は文章を頭から順に読み、前から順に理解を組み立てます。最初に結論が見えない文章は、読み手に「これは何の話だろう」と推測させながら読ませることになり、それだけで負担が増えます。
逆に言えば、情報を並べる順序にいくつかの「型」を持っておくだけで、伝わりやすさは劇的に改善します。才能ではなく、フレームワークの問題なのです。ここでは、ビジネスで使える代表的な構成の型を、使う場面とともに整理します。
PREP法|結論から書く基本の型
最も汎用性が高いのが PREP法 です。次の4要素の頭文字を取ったものです。
- P(Point/結論):まず最も伝えたい結論を述べる
- R(Reason/理由):なぜそう言えるのか、根拠を示す
- E(Example/具体例):理由を裏づける具体例・数値・事例を挙げる
- P(Point/結論の再提示):もう一度結論を述べ、念押しする
PREP法の利点は、忙しい読み手が 最初の一文だけで要点をつかめる 点にあります。続きを読む余裕がなくても、結論は伝わります。
例:
P:来期はオンライン商談の比率を高めるべきです。
R:移動コストを削減しつつ、商談件数を増やせるためです。
E:今期試験導入した3名は、移動時間が月平均20時間減り、商談件数が約1.4倍に増えました。
P:したがって、来期は全営業にオンライン商談を標準化することを提案します。
報告・提案・意見表明など、主張を伝える場面のほぼすべてにPREP法は当てはまります。迷ったらまずこの型に当てはめてみるとよいでしょう。
SDS法|説明・報告に向く型
主張ではなく 事実や情報を分かりやすく伝えたい ときは SDS法 が向いています。
- S(Summary/要点):これから話す内容の全体像を一言で示す
- D(Details/詳細):具体的な内容を展開する
- S(Summary/まとめ):要点を再度まとめる
PREP法が「主張+根拠」なのに対し、SDS法は「概要+詳細」の構造です。研修の説明、議事録の冒頭、マニュアルの導入など、説明や報告の場面で効果を発揮します。
例:
S:本日の打ち合わせでは、新システムの移行スケジュールについて3点を決定しました。
D:1点目は移行日を6月15日とすること、2点目は…(詳細)。
S:以上、移行日・担当・周知方法の3点が本日の決定事項です。
全体から部分へ|ホールパート法
ホールパート法は、「全体(Whole)→部分(Part)→全体」の順で構成する型です。最初に「お伝えしたいことは3つあります」と全体の数を予告し、それぞれを展開し、最後に全体を締めます。聞き手は あといくつ話が残っているかを把握できる ため、プレゼンや口頭説明で安心感を与えます。
「ポイントは3つです」と切り出すだけで、聞き手の集中が一段上がるのは、この予告効果によるものです。
一文一義・一段落一論点
どんな型を使う場合でも、土台になるのが 「一文には一つの内容、一段落には一つの論点」 という原則です。一つの文に複数の主張を詰め込むと、読み手はどれが本筋か判断できなくなります。
Before:このプランは費用対効果が高く、導入も簡単で、サポート体制も充実しているうえに、他社と比べて契約期間の縛りも緩やかなので、おすすめです。
After:このプランをおすすめします。費用対効果が高く、導入も簡単だからです。さらに、サポート体制が充実し、契約期間の縛りも緩やかです。
論点を分割して並べるだけで、同じ情報量でも一気に読みやすくなります。
複雑な内容にはピラミッド構造
主張と根拠が複数の階層にまたがる複雑な文章では、ピラミッド構造で整理すると破綻しません。頂点に最も伝えたい結論を置き、その下に結論を支える複数の根拠、さらにその下に各根拠を裏づける事実を配置します。
書き始める前に、この階層を箇条書きで一度メモにすると、本文を書く際に「いま自分はどの階層の話をしているのか」を見失わずに済みます。長い企画書や提案書ほど、この事前整理が効いてきます。
場面ごとの型の使い分け
どの型をいつ使うか迷ったときは、「相手が一番知りたいこと」を基準に選びます。
| 場面 | 向いている型 |
|---|---|
| 提案・意見・主張 | PREP法(結論と根拠を明確に) |
| 報告・説明・連絡 | SDS法(概要と詳細を整理) |
| プレゼン・口頭説明 | ホールパート法(全体像を予告) |
| 企画書・長文資料 | ピラミッド構造(階層で整理) |
型は道具です。一つに固執せず、伝えたい内容と相手の関心に合わせて選ぶことで、初めて効果を発揮します。慣れるまではPREP法とSDS法の2つだけでも、ほとんどのビジネス文書に対応できます。
構成を確認する3つの問い
書き終えたら、次の3点で構成を自己点検しましょう。
- 最初の一文だけ読んで、結論が伝わるか
- 各段落が「一つの論点」に絞られているか
- 主張に対して、根拠と具体例がそろっているか
この3問にすべて「はい」と答えられれば、その文章は論理的に整っていると言えます。
型に流し込む前に、まず整える
論理構成は、頭の中だけで完成させようとすると難しいものです。まず思いついた順に書き出し、後からPREP法やSDS法の順序に並べ替えるほうが現実的です。並べ替えのあとに文体や語尾を整える段階では、コトバみがきの整える機能を通すと、論理は保ったまま読みやすい表現に仕上がります。構成は自分で、仕上げはAIで――そんな役割分担が効率的です。